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1 相続の基礎知識 

(1)相続とは

(2)相続のスケジュール

(3)法定相続人と法定相続分

(4)相続財産

(5)特別受益

(6)寄与分

(7)特別の寄与

(8)配偶者短期居住権

(9)配偶者居住権
 

2 相続の承認・放棄

(1)相続の承認

(2)相続の放棄
 

3 遺産の分割

(1)遺言書の有無の確認

(2)遺産分割の協議

(3)遺産分割調停・審判

 
4 名義書換の手続

(1)不動産

(2)預貯金
 

5 法定相続情報証明

| 相続の基礎知識

  「相続」とは、ある人が死亡したときに、その人の財産上の権利や義務がある一定の人に承継されることをいいます。

  民法では、死亡した人を「被相続人」、財産を承継しうる一定の人を「相続人」、承継される権利や義務を「相続財産」としています。

| 相続の基礎知識

  相続は、被相続人の死亡によって開始されます。相続が開始されてからの大まかな手続の流れは、以下のとおりです。

   相続の開始

    ↓   死亡届・埋火葬許可申請書の提出(死亡の事実を知ってから7日以内)

    ↓   遺言書の有無の確認

    ↓   相続人の確定

    ↓   相続財産の確認・評価

   相続方針を決定

    ↓   相続放棄・限定承認の申述(相続開始を知ってから3ヶ月以内)

    ↓   申述をしない場合、被相続人の権利・義務を承継(単純承認)

   被相続人の準確定申告

    ↓   故人の所得税の確定申告(相続開始を知ってから4ヶ月以内)

   遺産の分割

    ↓   遺言書もしくは遺産分割協議(調停)にしたがって分割・遺贈

    ↓   相続財産の名義変更

   相続税の申告・納付

    ↓   申告が必要な人全員で申告書を作成・提出

        (相続開始を知ってから10ヶ月以内)

   遺留分侵害額の請求(遺留分減殺請求)

           相続開始および遺留分を侵害する遺贈・贈与があったことを知ってから1年以内、

        もしくは相続開始時から10年以内

| 相続の基礎知識

  民法は、誰が相続人となり、また各相続人がどのような割合(「相続分」といいます。)で相続財産を承継するかを定めています。ただし、相続分は、遺言で異なる割合を指定することができます。

  法定の相続人および相続分は、以下のとおりです。

 ① 被相続人に子がいる場合

   配偶者に1/2、子に1/2(配偶者がいない場合は、子に全部)

           相続開始時に子がいない場合、その子や孫が代襲して相続人となります。

   被相続人の養子も相続人となり、また縁組後の養子の子も代襲相続人となりえます。

 ② 被相続人に子がなく、父母・祖父母(直系尊属)が存命の場合

   配偶者に2/3、直系尊属に1/3(配偶者がいない場合は、直系尊属に全部)

   直系尊属のうち、被相続人に最も親等の近い人が相続人となります。

 ③ 被相続人に子・直系尊属がいない場合

   配偶者に3/4、兄弟姉妹に1/4(配偶者がいない場合は、兄弟姉妹に全部)

   相続開始時に兄弟姉妹がいない場合、その子が代襲して相続人となります。

   (兄弟姉妹の孫は、代襲相続人になりません。)

  子、直系尊属、兄弟姉妹が複数名いるときは、各人の相続分は、通常①から③の相続分を人数で割ったものとなります。

  ①から③に該当しない人は、相続人となりません。そのため、たとえば被相続人の子の配偶者(長男の嫁など)や内縁の妻が遺産を承継するには、遺贈や死因贈与などが必要となります。

令和1年7月1日以降に開始した相続について、遺言または遺産分割によって相続不動産につき法定相続分を超える権利を取得した相続人は、 登記をしなければ、法定相続分を超える部分を第三者に対抗できません。

たとえば、長男(法定相続分1/2)、二男(法定相続分1/2)が相続人である被相続人の不動産について、長男が単独で相続する旨の遺産分割協議が成立する場合、その旨の登記をしない間に共同相続の登記がなされて、二男の持分が第三者に譲渡される、あるいは二男の債権者から差し押さえを受け、その旨の登記がなされた場合、長男は単独で相続した旨を第三者あるいは債権者に主張できません。

このようなことがないよう、不動産を単独で相続する場合、すみやかに登記する必要があります。

| 相続の基礎知識

 ① 相続財産の範囲

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利・義務を承継します。ただし、扶養を受ける権利や身元保証など被相続人個人が取得・負担することに意味があったものについては、相続の対象となりません。また、祭具や墳墓などの祭祀財産も相続財産に含まれません。

相続人は、ローンや保証債務など被相続人の負債も承継します。被相続人の資産より負債が多いような場合、相続の放棄を検討する必要があります。
 

 ② 相続財産の調査

相続財産を具体的に把握するには、財産の種類に応じた調査が必要となります。主な財産の調査方法は、以下のとおりです。

  a)不動産

権利証、固定資産税通知書に被相続人名義の物件の所在、地番・家屋番号が記載されています。また、市区町村より名寄帳を取得し、同市区町村内にある被相続人名義の物件を確認できます。

各物件の物理的状況(地目や地積など)、権利関係(所有権や抵当権など)を知るには、管轄の法務局で登記事項証明書を取得するとよいでしょう。

  b)預貯金

通帳をもとに各金融機関より残高証明を取得し、通帳口座以外の口座がないか名寄せ(各支店・各種類の預貯金を合計すること)を依頼します。

他の金融機関、たとえば、ゆうちょ銀行、都市銀行、被相続人の住所地最寄りの地方銀行、信用金庫等に名寄せを依頼することができます。通帳が見当たらない金融機関にも、預貯金が見つかるかもしれません。

なお、残高証明や名寄せを依頼した金融機関の被相続人名義の口座は凍結され、預貯金の相続手続完了後でなければ払い戻すことができなくなります。

  c)有価証券

被相続人宛ての郵便物に証券会社や信託銀行からのものがあれば、証券口座を開設している可能性があります。残高証明を取得することで、株式(上場会社)・投資信託・国債の保有を確認できます。

  d)ゴルフ会員権

会員証券の有無を確認し、運営会社に相続手続について確認します。

  e)自動車

廃車しない場合、登録の名義変更が必要となります。

  f)生命保険

保険証券の受取人が被相続人自身となっている場合、保険金は相続財産となります。

  g)借金

通帳、クレジットカード、本人宛の郵便物、登記事項証明書などから、クレジット、ローンの有無を確認します。

被相続人の信用情報については、日本信用情報機関(JICC)、指定信用情報機関(CIC)、全国銀行個人信用情報センターで開示を求めることができます。

| 相続の基礎知識

相続人が被相続人から遺贈を受けたり、婚姻などの際に贈与を受けた場合、この贈与の額を考慮して、相続分が算出されます。贈与を受けた相続人(「特別受益者」といいます。)の具体的な相続分は、次のとおりです。

被相続人は、遺言による意思表示で、遺留分を侵害しない範囲でこのような取扱いをしないものとすることができます(「特別受益の持戻しの免除」といいます)。

また、婚姻期間20年以上の夫婦の場合、令和元年7月1日以降に被相続人よりその配偶者に居住用の建物及びその敷地が遺贈または贈与したときは、この遺贈または贈与については、遺言による意思表示がない場合でも特別受益の持戻しの免除があったものと推定されます。
 

 (相続開始時の被相続人の財産の価額+特別受益となる贈与の価額)×法定相続分

 −特別受益となる贈与の価額

  ※ 0円以下となる場合、具体的な相続分はありません。
 

  例1)遺産総額1億円。相続人は被相続人の妻、長男、長女の3人。

    長男は2000万円の特別受益を受けている。

     妻の相続分  12000万円 × 1/2  =  6000万円

     長男の相続分 12000万円 × 1/4 − 2000万円 =1000万円

     長女の相続分 12000万円 × 1/4 = 3000万円
 

  例2)遺産総額1億円(居住用不動産4000万円。預貯金6000万円)

    相続人は被相続人の妻(婚姻期間20年以上)、長男、長女の3人。

    妻は被相続人から居住用不動産について生前贈与を受けている(令和元年7月以降)。

     妻の相続分   6000万円 × 1/2 + 4000万円 = 7000万円

    長男の相続分 6000万円 × 1/4 =  1500万円

     長女の相続分  6000万円 × 1/4 =  1500万円

 

※ 特別受益の額は、相続開始時を基準に評価されますので、生前贈与時の額がそのまま控除されるわけではありません。

 

| 相続の基礎知識

事業の手伝いや療養看護などにより、相続人が、被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした場合、この貢献(「寄与分」といいます。)を考慮して、相続分が算出されます。寄与分を有する相続人の具体的な相続分は、次のとおりです。寄与分は、相続人間の協議によって定められます。協議が調わないとき、あるいは協議ができないときは家庭裁判所の審判を求めることとなります。

(相続開始時の被相続人の財産の価額−寄与分の価額)×法定相続分+寄与分の価額

| 相続の基礎知識

1 相続の基礎知識 (7)特別の寄与

 令和元年7月以降に開始した相続について、被相続人に対して無償で療養看護その他の労務を提供したことにより、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした被相続人の親族(「特別寄与者」といいます)は、相続の開始後に相続人に対して、寄与に応じた額の金銭の支払い(「特別寄与料」といいます)を請求することができます。

 例えば、長男の妻が義父を介護していたが長男は既に死亡している場合の義父の相続(相続人は義父の二男、三男)の際、長男の妻は二男、三男に対して介護の貢献分を金銭請求することができます。

 特別寄与料の支払いについて特別寄与者と相続人との間で協議が成立しない場合、特別寄与者は、相続開始および相続人を知ったとき6か月以内に家庭裁判所に協議に代わる処分を申し立てる必要があります。

 先の例で特別寄与料を請求する場合、長男の妻は、二男、三男と協議が成立しない場合に備え、介護日記等の記録を残すことが必要となります。

| 相続の基礎知識

1 相続の基礎知識(8)配偶者短期居住権

 被相続人の配偶者の生活を守るため、令和2年4月1日より、配偶者短期居住権が創設されました。

 相続開始時に被相続人の不動産に無償で居住(同居でなくてもよい)していた配偶者は、以下の期間まで居住建物(建物を一部を使用していた場合はその一部)を無償で使用することができます。

 建物の収益(賃貸)、居住権の譲渡はできません。

 ① 居住建物につき配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合

 建物所有権についての遺産分割確定の日または相続開始から6か月を経過する日のいずれか遅い日

 ② ①以外の場合

 (遺言に第三者に居住建物を遺贈する旨が定められていた場合、配偶者が相続放棄をした場合など)

 建物取得者が配偶者短期居住権の消滅を申し入れてから6か月を経過する日 

| 相続の基礎知識

1 相続の基礎知識 (9)配偶者居住権

 被相続人の配偶者の生活を守るため、令和2年4月1日より配偶者居住権が創設されました。

 被相続人の不動産に居住していた配偶者は、遺産分割または遺贈によって、居住していた建物の全部について、無償で使用および収益する権利を得ることができます。

 ① 取得方法

  ・遺贈による場合

文例)被相続人は、妻甲に対して、〇〇の建物につき存続期間を配偶者の終身の間とする配偶者居住権を遺贈する。

・死因贈与による場合

文例)1 贈与者は、〇〇の建物につき存続期間を配偶者の終身の間とする配偶者居住権を、受贈者妻乙に贈与することを約し、乙はこれを受諾した。

2 前項の贈与は、贈与者の死亡によって効力を生じる。

・遺産分割による場合

  文例)被相続人の遺産を次のとおり分割する。

 被相続人の妻丙に対して、〇〇の建物につき存続期間を〇年〇月〇日から20年間とする配偶者居住権を設定する。

② 存続期間

  配偶者の終身の間が原則ですが、遺産分割または遺言で別の定めをすることができます。

③ 使用および収益

配偶者は相続開始前の用法に従い、居住建物全体を使用および収益(賃貸)することができます。また、居住建物の所有者の承諾を得た場合、建物の増改築、第三者に使用収益させることができます。

配偶者居住権を譲渡することはできませんので、施設に入居する予定で入居一時金のため売却を予定するような場合、居住権の設定はできないものと考えられます。

④ 修繕、費用負担

  配偶者は、居住建物の使用収益に必要な修繕をすることができます。

  必要な修繕についての費用は配偶者が負担します。

⑤ 登記

配偶者は、配偶者居住権設定の登記をして、配偶者居住権を第三者に対抗することができます。配偶者が登記することを請求した場合、居住建物の所有者となった相続人は登記を備えさせる義務を負います。

⑥ 配偶者居住権の価額

法律上決まった算定方法はなく、厳密には不動産鑑定による評価によることになりますが、簡易な評価方法を利用することができます。

簡易な評価方法:

 建物と敷地の相続税評価額から配偶者居住権付所有権の建物と敷地の相続税評価額を控除することで算出できます。

 配偶者居住権付建物所有権の評価額:

  建物相続税評価額×(残存耐用年数―居住権存続期間)/残存耐用年数

  ×居住権存続期間に応じたライプニッツ係数

    ※1 残存耐用年数は建物の構造により法律上定められています。

         木造は33年、鉄骨鉄筋コンクリートは70年です。

※2 存続期間が終身の場合、厚生労働省の発表する「完全生命表」に掲げる

   年齢・性別に応じた平均余命となります。

   配偶者居住権付敷地所有権の評価額

    敷地相続税評価額×居住権存続期間に応じたライプニッツ係数

⑦ 消滅

  配偶者の死亡または存続期間の満了により配偶者居住権は消滅します。

この場合に居住権消滅により増加した建物・敷地の評価額については相続税(贈与税)の課税はされないものとされています。

配偶者による放棄によっても消滅します。ただし、放棄により増加した建物・敷地の贈与税の課税がなされるものとされています。

⑧ 利用方法

 ア 配偶者の居住を保障したうえで、預貯金も配分したい場合

 例えば、相続人は妻、長男、二男で、相続財産が不動産(3000万円)、預貯金(2000万円)の場合に妻が不動産を相続する場合、法定相続分(2500万円)を超え、預貯金を取得できないことが考えられます。

 不動産の配偶者居住権が2000万円と評価される場合、妻は居住権のほか預貯金のうち500万円を取得することができるものと考えられます。

 イ 被相続人の家系に家の所有権を承継させたい場合

 例えば、相続人は妻(子はいない)、弟で相続財産が不動産の場合に妻が不動産を相続すると、妻が死亡した場合、妻の兄弟姉妹に不動産は相続されることになります。

 このような二次相続をさけるため、妻に居住権、弟に居住権付所有権を取得させることで被相続人家系に不動産の所有権を承継することができます。

 ハ 節税方法として利用する場合

 居住権と所有権を分けて相続することができ、また配偶者死亡(または存続期間満了)による居住権消滅により増加した不動産の評価は相続税(贈与税)課税の対象とならないことから、一次相続、二次相続の節税手段として利用することが考えられます。

| 相続の基礎知識

 相続があることを知った場合、相続人は相続に対する方針、すなわち承認するか放棄するかを決定しなければなりません。
 

(1)相続の承認

 ① 単純承認

  単純承認とは、相続人が被相続人の資産や負債の一切を引き継ぐ意思表示をすることをいいます。

また、特段意思表示をしない場合であっても、相続財産の全部または一部を処分した場合、また法定の期間内に相続の放棄や限定承認をしない場合、単純承認したものとみなされます。

例えば、相続人が遺産分割協議、被相続人の預金の解約、財産の譲渡、売掛債権の取り立て、不動産賃料の受領口座の変更、遺産による被相続人の債務の弁済などを行った場合、以後相続の放棄はできません。

もっとも、遺産から被相続人の葬儀費用や治療費を支払った場合は、相当な額による限り、単純承認に当たらないものとされています。
 

 ② 限定承認

限定承認とは、相続人が相続財産の限度において被相続人の債務や遺贈の義務を負担することを留保して、相続の承認をする意思表示のことをいいます。

  相続人にとって被相続人の資産と負債のうちどちらが多いか不明な場合に有効な手段といえます。

  もっとも、

   ⅰ)相続開始を知ってから3ヶ月以内に相続人の全員で家庭裁判所に申述しなければならないこと

   ⅱ)遺産の分配前に相続財産管理人(相続人の内の1名、相続人が複数の場合は裁判所が選任)

     が清算業務(被相続人の債権者に対する公告・催告、遺産の競売による換価、債権を申し出た

     債権者に対する弁済)を行わなければならないこと

   ⅲ)相続開始時に資産の譲渡があったとみなされ、譲渡所得税が課せられることがあること(準確定

     申告で計上)

   等の手続上、税務上の煩雑さにより、実務上の利用は少数にとどまっています。

    なお、相続人は、希望する遺産の一部につき、家庭裁判所に鑑定人の選任を申立て、鑑定人の算出

した価額を支払うことで、その競売を止めることができます(先買権といいます)。 被相続人の負債を承継したくないが自宅だけは残したいといった希望がある場合、限定承認を手段として検討する余地があるといえます。   

| 相続の基礎知識

相続財産には、被相続人の資産だけでなく負債も含まれます。また、遺産の分割を行うには遺産に関心がない相続人も協議に参加しなければなりません。

そこで、相続人が故人の借金などを負いたくない場合、また相続人間の争いに巻き込まれたくないような場合、家庭裁判所に相続の放棄を申述することができます。
 

 ① 相続放棄の申述

相続放棄をしたい相続人は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(「熟慮期間」といいます。)に、被相続人の住所地の家庭裁判所に放棄の申述をしなければなりません。申述は、各相続人が単独で行います。
「相続の開始があったことを知った時」とは、被相続人が死亡したこと、自己が相続人であることの両方の事実を知った時点となりますが、事情によっては相続財産あるいは相続する負債があることを知った時点とすることが判例で認められています。
相続財産の調査に時間がかかるような場合、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てることができます。
申述後、家庭裁判所による申述書のチェック、照会状などによる申述意思の確認を経て受理の審判がなされます。
申述が受理された後、申述人は、裁判所書記官に対して、相続放棄申述受理証明書の交付を申請することができます。相続放棄申述受理証明書は、不動産の相続登記の添付書類となっています。
 

 ② 相続放棄の効果

相続放棄の申述人は、被相続人の相続について初めから相続人とならなかったものとみなされ、被相続人の資産や負債の一切を承継しないことになります。また、申述人の子や孫は、申述人を代襲して被相続人の財産を承継することはありません。
ただし、受取人を申述人に指定した生命保険金、受給権者が申述人と定められている死亡退職金は相続財産に含まれず、放棄をした場合も受け取ることができます。
なお、被相続人の子の全員が相続の放棄をすると、被相続人の親、あるいは兄弟姉妹が相続人となります。放置して被相続人の借金を負うような事態を避けるため、このような次順位の相続人にも、相続人になったことや相続放棄の申述を要することを知らせる必要があります。

| 相続の基礎知識

 ① 遺言書の探索

遺言とは、故人の生前の意思や希望を表したもので、遺言をした方(「遺言者」といいます。)の死亡の時よりその効力が生じます。
遺言者は、遺言により、財産を遺贈し、また法定相続分と異なる相続分を定めたり、遺産の分割方法を指定することができます。
原則として、遺言の効力は相続人間の協議に優先し、遺言の存在を知らずに行った遺産分割の協議は錯誤により無効となることがあります。そのため、遺産分割の協議をする前に遺言書がないか確認する必要があります。
公正証書による遺言書の場合、最寄りの公証役場にて被相続人が国内のどの公証役場で作成したかを照会することができます。また、遺言書が見つからない場合、作成した公証役場で遺言書の再交付が請求できます。
自筆による遺言書の場合、被相続人から保管場所を知らされていなければ、金庫、引き出し、仏壇、銀行の貸金庫など保管しそうな場所を探し、また、後見人や信託銀行、生前付き合いのあった弁護士・税理士等の専門家が遺言書を預っていないか確認することになるでしょう。

 ② 遺言書の検認

自筆による遺言書を保管していた人あるいは発見した人は、相続開始を知った後、速やかに遺言書を遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出し、その検認を受けなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所にて開封します。
検認とは、遺言書の偽造・変造を防ぐため、家庭裁判所が遺言書の外形、方式等の状態を調査確認することをいいます。遺言内容の真実性や有効性を判断するものではありませんので、検認を経た遺言書が無効であることも考えられます。
検認の申立て後、裁判所から各相続人宛てに検認期日の通知がなされます。検認期日において申立人が遺言書を提出し、出席した相続人の立会いのもとに開封および検認が行われます。
検認を経ないで遺言を執行したり、裁判所外で開封をした人に対しては、5万円以下の過料が科せられることがあります。また、検認を経ない自筆による遺言書は、不動産登記において有効な添付書面として取り扱われていません。

| 相続の基礎知識

 

遺言がない場合、相続人は、その協議により遺産の分割をすることができます。遺産分割の協議には、原則として相続人の全員が参加します。相続人間で合意が成立するのであれば、どのように分割するかは自由で、法定相続分にしたがう必要もありません。
なお、遺言で分割方法が指定されている場合でも、判例で遺言と異なる分割を協議で行うことが認められています。
遺産分割協議の対象となる財産は、被相続人の資産に限られます。被相続人の負債に関しては、相続人が法定相続分に応じて当然に承継することとなります。協議により特定の相続人が被相続人の債務全部を承継すると定めることはできますが、債権者の同意を得ない限り、他の相続人も債権者からの請求を拒むことはできません。

令和元年7月以降に開始した相続について、遺産分割の協議前に遺産に属する財産が相続人の一人または数人により処分された場合、他の相続人全員の同意により処分された財産も遺産分割の時にあったものとみなすことができます。
例えば、被相続人の遺産(預貯金2000万円)、相続人が長男、二男のケースで、長男が被相続人の死亡後協議前に預貯金のうち500万円を解約して使用してしまった場合、遺産分割協議または家庭裁判所の遺産分割調停において、遺産分割の対象は残額の1500万円でなく解約前の2000万円となり、二男は1000万円分の取得を主張することができます。

 ① 分割方法

  a)現物分割

   個々の財産を各相続人が取得する分割する方法のことをいいます。

   例)1.相続人甲は、次の遺産を取得する。

        東京都○区○丁目 ○番○

        宅地 ○.○㎡

     2.相続人乙は、次の遺産を取得する。

        ○○銀行○○支店の被相続人名義の預金

  b)換価分割

   相続財産を売却して、その代金を各相続人に分配する方法のことをいいます。

   例)1.相続人甲及び乙は、次の遺産を各2分の1の割合で取得する。

        東京都○区○丁目 ○番○

        宅地 ○.○㎡

2.相続人甲及び乙は、共同して前項の不動産を売却し、その売却代金から売却に要する費用を控除した残額を持分割合に従って取得する。

  c)代償分割

 ある相続人が相続分を超える額の遺産を取得する代わりに、他の相続人に対して相当額の債務を負担する分割方法のことをいいます。

   例)1.相続人甲は、次の遺産を取得する。

        東京都○区○丁目 ○番○

        宅地 ○.○㎡

     2.相続人甲は、相続人乙に対し、遺産取得の代償として、金○円を支払う。
 

 ② 遺産分割協議書

分割の協議が成立した場合、その内容を証するため協議書を作成し、各相続人が署名し、実印を押印します。遺産分割協議書は、不動産の相続登記や相続税の申告に必要となるほか、預貯金・株式・自動車等の名義書き換えなどの際、提出を要することがあります。
協議書の形式、作成枚数に決まりはありません。通常は一つの文書に相続人全員が署名捺印を行いますが、同一内容の文書に各相続人が署名捺印したものを一冊に取りまとめる形式でも問題はありません。
 

 ③ 遺産分割の効力

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じます。したがって、各相続人が協議によって取得した財産は、被相続人から相続により直接承継したことになります。
遺産分割によって相続人が単独で取得した不動産の所有権は、登記をしなければ法定相続分を超える部分について第三者に主張できません。被相続人名義あるいは相続人の共有名義のまま放置していると不動産の一部が他の相続人により第三者に譲渡されたり、また差し押さえを受けたりする可能性があります。このような事態を防ぐため、協議の成立後は早めに所有権移転の登記を完了しておく必要があります。
 

 ④ 相続人中に行方不明の方がいる場合

行方不明の相続人がいる場合、その方(「不在者」といいます。)の財産管理人が、家庭裁判所の許可を得て、不在者に代わって遺産分割の協議に参加することができます。
財産管理人の選任は、相続人が不在者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。
財産管理人による遺産分割協議の許可を得るためには、通常、協議書案に不在者に対する相当額の代償金を支払うとする条項を記載する必要があります。
なお、行方不明の期間が長期にわたる場合、相続人は不在者の失踪の宣告を不在者の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。失踪宣告がなされた場合、不在者は行方不明になってから7年間が満了したときに死亡したものとみなされます。この場合、遺産分割協議は、不在者の死亡を前提として行うことになります。
 

 ⑤ 相続人に未成年者がいる場合

相続人の中に未成年者がいる場合、親権者などの法定代理人が遺産分割協議に参加します。ただし、親権者も相続人として協議に参加する場合、また親権者が複数の相続人の法定代理人となる場合、法定代理人に代わって、特別代理人が未成年者の遺産分割協議を代理する必要があります。
特別代理人の選任は、親権者や利害関係人が未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。
 

 ⑤ 相続人に認知症になっている方がいる場合

相続人の中に認知症などにより遺産分割の協議内容を理解することができない方がいる場合、その方に代わって遺産分割協議に参加する成年後見人の選任を申し立てる必要があります。
成年後見人の選任は、配偶者や親族が本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることができます。
すでに成年後見人が選任されている場合であったとしても、成年後見人が相続人として協議に参加する場合、未成年者の場合と同様に成年被後見人に代わって遺産分割協議に参加する特別代理人の選任を申し立てる必要があります。

| 相続の基礎知識

 ① 家庭裁判所による遺産分割の調停、審判

遺産の分割について、相続人間で協議が調わない場合、また協議をすることができない場合、相続人は、他の相続人を相手方として、相手方(複数いる場合はいずれか1名)の住所地を管轄する家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立てることができます。
調停を申し立てるにあたっては、申立人が遺産を調査し、遺産目録を作成する必要があります。
調停において相続人間に合意が成立し、その内容が調書に記載されたとき、調停が成立します。
調停不成立の場合、自動的に審判手続に移行します。審判手続では、裁判所が分割方法を決定します。遺産分割の審判は、相続人に告知をした日から2週間が経過すると確定しその効力を生じます。審判に不服の相続人は、審判の確定前に即時抗告を申し立て、抗告審の判断を求めることになります。
調停調書および確定した審判は、確定判決と同一の効力を生じます。また、具体的な給付義務を定めた調停調書、審判書正本の記載は、執行力のある債務名義と同一の効力を有します。したがって、調書・審判書に定めた金銭債権や物の引渡請求権は執行文の付与を要せず直ちに強制執行することができます。また調書・審判書に登記義務の履行について定めた場合、登記義務者の申請意思があったものとみなされ、登記権利者が執行文の付与を要せず単独で登記を申請することができます

 ② 具体的相続分に基づく遺産分割調停の申立ての制限

裁判所は、令和5年4月以降に発生した相続について、相続開始日から10年を経過した後に行う遺産分割に関して、一部の相続人の特別受益や寄与分を反映した具体的相続分を考慮した調停を行わず、法定相続分に基づいて調停を行うことになりました。

令和5年3月までに発生した相続については、令和10年4月以降に行う遺産分割も同様の取扱いとなります。

例えば、父(令和5年4月死亡。遺産1億円)の相続人が長男、二男の2名のとき、生前に長男が5000万円の生前贈与を受けている場合、相続人で合意のないまま、相続開始日から10年を経過した後に遺産分割調停を申し立てる場合、裁判所は長男の特別受益を遺産に加えず、長男5000万円、二男5000万円の相続分があるものとして調停が進められます。

相続人の合意による遺産分割協議ができない場合、具体的相続分に基づき遺産分割を行いたいのであれば、上記の期間の経過したまでに家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。

 

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不動産の所在地を管轄する法務局に、不動産を承継する相続人が所有権移転の登記を申請します。被相続人が団体信用生命保険に加入している場合、死亡により住宅ローンも完済されますので、抵当権抹消の登記をあわせて申請します。
所有権移転の登記に添付が必要な主な書類は次のとおりですが、ケースによって他の書類の添付を要することがあります。相続登記に関する手続は煩雑なため、通常は司法書士が依頼を受けて代理しています。

令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されています。相続人は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請する必要があります。

また、令和6年4月1日より前に相続した不動産で相続登記がされていない場合、令和9年4月1日までに相続登記の申請をする必要があります。

正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

遺産分割の協議がまとまらず、3年以内に相続登記の申請ができない場合は、相続人申告登記(不動産の登記名義人が亡くなっていること、申出をする者が登記名義人の相続人の1人であることを報告するだけの内容の登記)をすることで、過料をまぬがれることができます。

① 遺産分割協議がなされている場合の必要書類

  ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本

  ・被相続人の最後の住所を証する除住民票または戸籍の附票(本籍記載のあるもの)

  ・各相続人の戸籍謄(抄)本および住民票(本籍記載のあるもの)

  ・遺産分割協議書(各相続人の印鑑証明書付)

  ・固定資産評価証明書

 ② 遺言書によって遺産分割方法の指定がなされている場合の必要書類

  ・遺言書

  ・被相続人の除籍謄本

  ・被相続人の最後の住所を証する除住民票または戸籍の附票(本籍記載のあるもの)

  ・不動産を取得した相続人の戸籍謄(抄)本および住民票(本籍記載のあるもの)

  ・固定資産評価証明書

 ③ 遺産分割調停または遺産分割審判がなされている場合の必要書類

  ・調停調書または確定証明書付きの審判書正本

  ・被相続人の最後の住所を証する除住民票または戸籍の附票(本籍記載のあるもの)

  ・不動産を取得した相続人の住民票(本籍記載のあるもの)

  ・固定資産評価証明書

 ④ 相続人申告登記を申し出る場合の必要書類

  ・被相続人の除籍謄本、除住民票または戸籍の附票(本籍記載のあるもの)

  ・申出人の戸籍謄本、住民票または戸籍の附票(本籍記載のあるもの)

  ・申出人が被相続人の相続人の1人であること分かる程度の戸籍の証明書

   (戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本など)

   相続人申告登記では、不動産の登記名義人が死亡したことが登記簿に記録されますが、相続人のうち

   誰が不動産を取得したかを示すものではありません。

   遺産分割が成立した後は、相続登記の申請による名義変更が必要となります。

 

 

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預貯金の場合、口座名義を変更することもありますが、通常は口座を解約し、現金で受け取ります。
相続人が、相続開始を金融機関の取引支店に申し出ると故人名義の口座は停止され、相続手続の完了まで預貯金の引出しができなくなります。
申し出後、金融機関の案内状が郵送されるので、案内にしたがって必要書類を集め、所定の相続届に各相続人の署名し実印を押印して、提出することになります。遺産分割協議を行った場合の相続届以外の必要書類は、通常次のとおりです。戸籍謄本等や遺産分割協議書は、金融機関に申し出ることで手続完了後還付されます。

  ・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本

  ・各相続人の戸籍謄(抄)本

  ・各相続人の印鑑証明書

  ・遺産分割協議書

  ・故人名義の通帳・証書・キャッシュカード

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5 預貯金の仮払い

 遺産に属する預貯金は、原則として遺産分割協議前に払い戻すことはできません。

 もっとも、被相続人の医療費や葬儀費用、相続人の生活費のため、協議前に引き出す必要が生じることがあります。

 相続人は、遺産に属する預貯金のうち、各金融機関にある相続開始時の預貯金の3分の1に法定相続分を乗じた額(上限150万円まで)まで、単独で各金融機関に払戻を請求することができます。払い戻した金額は、その相続人が遺産の一部分割によって取得したものとみなされ、のちの遺産分割協議で清算することになります。

 例えば、被相続人が甲銀行(1000万円)、乙銀行(600万円)の預貯金を有していた場合、相続人が妻、子1人のみのケースでは、妻は以下のとおり、甲銀行に150万円、乙銀行に100万円の払戻しを請求することができます。

  甲銀行  1000万円 × 1/3 × 1/2(法定相続分)> 150万円

  乙銀行  600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
 

 家庭裁判所に遺産分割調停を申し立ている場合、遺産に属する預貯金の払戻しが必要な事情があり、かつ他の相続人の利益を害さない場合、相続人は預貯金の一部または全部を相続人に仮に取得させる旨の仮処分を家庭裁判所に申し立てることができます。

 仮処分がなされた場合、相続人は仮処分で認められた額につき、単独預貯金を払い戻すことができます。払い戻された預貯金の額も含めて、遺産分割調停または審判がなされます。

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6 法定相続情報証明

 被相続人の不動産の相続登記、預貯金の解約、相続税の申告など各種の相続手続においては、原則として被相続人の出生から死亡に至るまでの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本、相続人の戸籍謄本の提出が必要となります。

 このため、戸籍謄本等の取得通数が多くなり費用がかさむ、それぞれの手続における戸籍謄本等の確認や還付の手続に時間がかかるなどの不都合があります。

 平成29年5月より法定相続証明情報制度が開始されました

 相続人は、法務局に以下の書類を提出して申し出ることで、被相続人の開始時における法定相続人の一覧に登記官の認証を付した法定相続情報証明書(A4版1枚)を無料で10通まで取得できます。

 ⅰ)被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本、相続人の戸籍謄本

 ⅱ)被相続人の住民票の除票(本籍記載のもの)

 ⅲ)申出人の住民票(本籍記載のもの)

 ⅳ)申出人作成の相続関係の一覧図

 戸籍謄本類、住民票の除票は、法定相続情報証明書発行の際、還付されます。

 申出の手続は、司法書士等に委任することができます。

 

 法定相続情報証明書は、不動産登記、預貯金、税務の相続手続において、戸籍謄本類に代わるものとして提出することができます。

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